1-5.【濃い色の注意点】CMYKの合計値とは?ベタ塗りをキレイに印刷するコツ
前回は「RGBとCMYKの違い」について解説しましたね。
印刷データはCMYKで作るのが基本ですが、実はCMYKの各色のインク量にも注意が必要なんです。
特に、黒や濃い色をベタッと塗りたい時、「インクをたくさん使えばもっと濃くなるはず!」と思っていませんか?
実はそれが、思わぬ印刷トラブルの原因になることがあるんです。
今回は、キレイでトラブルのないベタ塗り・濃色印刷のコツ、「CMYKの合計値」について解説します!
CMYKの合計値(総インキ量)って何?
CMYKって4色のインクで色を作るでしょ?その4色のインクの量を全部足したのが『CMYKの合計値』または『総インキ量』って呼ばれるものだよ!
CMYKカラーモードで色を指定するとき、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)それぞれに0%から100%までの値を設定しますね。
例えば、
- C:100% M:80% Y:0% K:0% という色があったとします。
この色のCMYK合計値は、100 + 80 + 0 + 0 = 180% となります。
もし、リッチブラック(深みのある黒)を表現しようとして、
- C:100% M:100% Y:100% K:100% と設定したら、合計値は 400% にもなってしまいます。
このCMYK合計値が高すぎると、様々な印刷トラブルを引き起こす可能性があるのです。
CMYK合計値が高いと、どんな問題が起きるの?
インクを使いすぎると、紙がインクを吸い込みきれなくて、乾きにくくなっちゃうんだ。そうすると、あんなことやこんなことが…!
CMYKの合計値が高すぎる(=使用するインクの総量が多すぎる)と、以下のような問題が発生しやすくなります。
- インキの乾燥不良
インクがなかなか乾かず、次の工程に進めなくなったり、納品が遅れたりする原因になります。
- 裏移り(セットオフ)
乾いていないインクが、重ねられた他の印刷物の裏面に付着してしまう現象です。せっかくのデザインが台無しに…。
- インキ剥がれ・擦れ
インクがしっかりと紙に定着せず、ちょっとした摩擦で剥がれたり、擦れて汚れたりしやすくなります。
- 波打ち(ウェイビー)
特に薄い紙の場合、インクの水分で紙が波打ってしまうことがあります。
- モアレの発生要因(濃度が高い場合)
意図しない模様(モアレ)が見えてしまう原因の一つにもなり得ます。
これらのトラブルは、印刷の品質を著しく低下させてしまいます。
推奨されるCMYK合計値は?どうやって確認するの?
じゃあ、どれくらいのインク量なら安心なの?実は、印刷会社さんや使う紙によってもちょっと違うんだよ。
一般的に、CMYKの合計値の上限は300%~350%以内に抑えるのが良いとされています。
ただし、これはあくまで目安です。
- 新聞紙のようなインクを吸いやすい非塗工紙
合計値の上限はもっと低く設定されることが多いです(例:280%以下)。
- コート紙のようなインクが乗りにくい塗工紙
比較的高い合計値でも対応できる場合があります。
- 印刷機の性能や印刷会社の基準
これらによっても推奨値は異なります。
一番確実なのは、入稿する印刷会社のウェブサイトで推奨値を確認するか、直接問い合わせることです。
IllustratorやPhotoshopでの確認方法
- Illustrator: 「ウィンドウ」メニュー → 「分版プレビュー」を開き、「オーバープリントプレビュー」にチェック。「総インキ量」を選択し、上限値を設定すると、その値を超えている箇所がハイライト表示されます。
- Photoshop: 「ウィンドウ」メニュー → 「情報」パネルを表示。スポイトツールで色を拾うと、CMYKの各値と合計値(TAC/総インキ量と表示されることも)が確認できます。
キレイな「リッチブラック」を作るコツ
「K100%だけだと、なんだか黒が浅い気がする…」と感じることはありませんか?
そんな時におすすめなのが「リッチブラック」です。K100%にCMYの色を少し加えることで、より深みのある豊かな黒を表現できます。
ただし、ここでもCMYK合計値に注意が必要です!
リッチブラックの例(合計値300%以内を意識)
- C:40% M:30% Y:30% K:100% (合計:200%)← オススメ!
- C:60% M:40% Y:40% K:100% (合計:240%)
- C:50% M:50% Y:50% K:100% (合計:250%)
避けるべきリッチブラックの例(合計値が高すぎる)
- C:100% M:100% Y:100% K:100% (合計:400%)← これはNG!
K100%に加えるCMYのバランスによって、青みがかった黒、赤みがかった黒など、ニュアンスを変えることもできます。色々試してみるのも楽しいですが、必ず合計値を確認しながら設定しましょう。
CMYKの合計値、理解できましたか?
特に濃い色や黒のベタ塗りを多く使うデザインの場合は、この総インキ量を意識することが、美しい印刷物への重要なステップです。
次回は、「【画質は大丈夫?】印刷に適した画像解像度とは?~Web用画像との違い~」をお届けします。印刷で使う画像の「細かさ」についての知識です!お楽しみに!
この記事の監修者
印刷営業
吉留 隆
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